「音楽x農業」をコラボレーションさせる若者

出演者:AGRI CRAFT(アグリクラフト)

http://agri-craft.tumblr.com

羅久井俊介さん(Vo,Gt) 岡山県出身 八王子市在住

田中宏明さん(Gt) 鳥取県出身 国立市在住

佐々木淳一さん(Dr)青森県出身 国分寺市在住

全員28歳

彼らは「朝は畑で収穫体験、夜はライブハウスで音楽を聞きながら採れたて野菜を食べる」という
『音楽×農業』をコラボレーションさせた「VEGEON (ベジオン)」というイベントを主催している。

「太陽の下で野菜を収穫」「地下室で音楽イベント」一見相反する2つの要素をMIXしたこのイベント。
どのようなきっかけからこのようなイベントをスタートさせたのか?
また、実際にイベントを実施してみて見えてきたものなどについてお話を伺って来ました。

★農業と音楽をひとつにしたイベントをやろうと考えるようになったきっかけは何ですか?

(羅久井)僕は東京農業大学出身で、農大では陸上部だったんですけど
そこで知り合った親友の実家が山形でさくらんぼ農家をやっていて
「その彼とバンドをやろう」とその時思っていて、
僕はそのころはまだバンドを組んだこともなかったんですけど。
でも、卒業と同時に彼は山形に帰ってしまって、僕はどうしても彼と音楽がやりたかったので
どうやったら農家と音楽をからませられるのかな?と考えるようになったんです。

★彼をひきとめるためにということですか?

(羅久井)「将来どうやったら彼と関われるんだろう?」って考えたときに
音楽と農業をからめたロックフェスをやれば、彼の作った作品をそのフェスで食べてもらえるんじゃないか?と考えるようになりました。

★「農作物=作品」ということですね?

(羅久井)そうです。で、「バンドがやりたくても出来ない」という時に
高校時代の友人だった田中とたまたま合う機会があって、ちょっと飲みに誘って「こういう『音楽フェス』をやってみたい」という話をしたんですね。そうしたら「面白いじゃん」てことになって。
僕が一人で考えていたことを彼が受け止めて「いいんじゃない?」と言ってくれたんで、そこから始まった感じなんです。

★「バンドを組む」ということ以前に「音楽フェスをつくる」というアイデアありきなんですね?

(田中)もともと羅久井くんは「どうしても音楽がやりたい」というタイプではなくて
「どうやったらメッセージが伝わるのか?」ということを考えたときに、
「音楽が早いんじゃないの」と思い「音楽を選択した」という感じなんです。

★「音楽」「農業」それぞれに意識が向いたきっかけは何ですか?

(羅久井)私の実家は農家ではないんです。両親は公務員なんです。
中学生の時に陸上部だったんですけど、カールルイスに憧れまして、「オリンピックに出たい」という思いがあったんです。
僕らが中学生の頃ってちょうど環境問題が盛んな頃で、メディアでもいろいろな環境問題が取り上げられていて、僕も正義感から「オリンピックで一位になって環境問題について訴えたい」と思い、
その頃の僕は訴えたくて走っていたんですけど、(笑)
実力としては「日本一にさえなれない」ということが感覚としてわかってきて、そのあたりから音楽をやり始めたんです。友達がギターをやっていたんで。

また、その頃食事がインスタントなものが多くて、家でひとりでごはんを食べることが多かったんです。すごくむなしいなと思った瞬間があったんです。良い食事をしていないと筋肉もつかないんですよね。

「食事って大切だな」と考えるようになって、食事の「元」ってなんだろなって考えて。

なんで競技の記録も伸びないし体つきも良くならないんだろう?
と考えているうちに「農業」という「食の原点」に目を向けるようになったんです。

★今は農業をされているんですか?

(羅久井)いいえ。僕は農業は全くやっていません。
農大を卒業した後は、オーガニック食品や無添加食品を扱う会社に就職して4年間働いていたんです。
その会社にいた時に農家さんに直接行く機会があったんです。

実際に農家の方とお話をさせていただいたのはその時が初めてだったんですが
僕が感じたのは、みなさん「哲学を持っている」「情熱をもっている」ということで、
さらにその農家さんが畑で作った野菜をいただいて、その場で食べたらとても「おいしい!」

とれたての野菜を食べて、おいしさを体感したんです。
まわりの人もみんな「おいしいおいしい!」って言っていい笑顔になってて
すごく「幸せだな」って思って。そのときに「農家さんもアーティストなんだな」って思ったんです。

★おお!それは面白い視点ですね

(羅久井)ぼくはMr.Childrenが好きなんですけど、ミスチルさんは音楽を紡ぎだしていろんな人を感動させている。
農家さんは野菜や果物を育てていろんな人を感動させている。
形は違えど、作品をリリースして、それが誰かの一部になっているんだな、と思ったんです。

★「農作物=作品」ということですね。実際に、このイベントが具現化したのはいつ頃なんですか?

(田中)ちょうど1年くらい前で、具現化するにあたって佐々木くんが参加してきた感じです。

(羅久井)この三人が揃った時点で根本的な部分で考え方が合うメンバーが揃った感じがしています。
お互いにアドバイスもできる良い関係のメンバーが揃ったので、いいな、というか。 ありがとう。というか(笑)

★メンバー3人が同じ方向を向いてるんですね

(羅久井)ベクトルがあっている、という感じですね。

★第一回目が3月26日に行われたということで、実際に「音楽フェス」という形式で動いてみてどうですか?

(佐々木) まず「楽しい」ですね。「収穫する」という経験自体が普段なかなかないので。
そして実際に食べたらとってもおいしいかったんです。 ライブハウスの中が野菜のかおりでいっぱいになるんですよね。

(羅久井)みんながかじったきゅうりの香りがステージまで届いたりして。

(田中)格別だったよね。甘い香りがライブハウスを埋め尽くすんですよ。

(羅久井)この日は、武蔵境の後藤農園さんというところで収穫体験をし、
夜は下北沢club Queというところでライブイベントを実施しました。

開催してみて見えて来たのは「アーティストの表現できる空間が開拓できる」ということで
「ミュージシャンが表現する空間が広がる」「農家さんが表現する空間広がる」ということです。

★このイベントの企画書にある「都市農業と都市生活者の発展と豊かな暮らしを願って」という一文なんですが、これは「都市農業がやりづらくなっている」という状況が見えるということなのでしょうか?

(羅久井)ここ2年くらいで感じてきたことなんですけど
都市農業、特に東京はおやじさんが死んだら相続問題で農地が宅地に変わるんです。
そうするとその収入ではとてもやっていけないので農家さんはその土地を売ってしまい、
その土地は駐車場になったりアパートがたったり、ということが繰り返されているんですね。
農業がどんどん減っている現状がある、と。

あと、いわゆる「オーガニック」って「世の中のブーム」なんです。
食料品が工業製品ばかりで一般化してしまった商品ばかりになったところで「オーガニック」って打ち出すとみんな食いつくんですけど、高価だったりして買いにくい商品が増えていって、
4年間会社にいたんですけどだんだん業績がふるわなくなってきて、「なんでだろうな?」って考えたんですけど、高いし買いづらいし、継続できないんですね。

「オーガニック」って本来は継続していくものなんですけど、経済のシステムの中の「オーガニック」っていうひとつの「継続しづらいジャンル」になってる、ってことに気づいて。
「純粋なオーガニックってなんなんだろう?」って考えたらそれは「地域交流以外には何もない」と思いはじめたんです。

例えば立川に住んでいる人が立川で作られた野菜を食べたら断然コストも安いし、何も無駄が無いですよね。

★私達は「地域交流」をキーワードに活動をしているので今のお話を聞いてかなり興奮してます。
5月25日(土)に武蔵野市の後藤農園さんでプレイベントを開催されるんですね?

(田中)とにかく継続をしていきたいんです。そのために「農業だけのイベント」というのも企画して行きます。この日は「畑ライブ」を行います。

★畑で音楽ライブをやるんですね?

(田中)そうです。これはミュージシャンの表現空間を「畑」へと広げるということです。
ちなみに僕らのホームページ(http://agri-craft.tumblr.com)には農家さんを紹介するページもありますのでぜひ見ていただきたいです。農家さんの表現空間も広げたいんです。
とにかく今はイベントの「時間」と「場所」を広げて、より多くの人が参加できるようにしたいんです。

(羅久井)「参加型ロックフェスを開催すること」を第一に考えているので、
まず参加してもらって、汗をかいてもらって、体感して欲しいんです。
めんどくさいことは抜きで「体で感じる」っていうか、「おいしい!」とか「楽しい!」とか。

★次回のイベントが6月14日(金)吉祥寺プラネットKで開催されるということですが「吉祥寺」が活動の中心なんですか?

(羅久井)ぼくは今、吉祥寺のハモニカ横町で仕事をしていているんですけど、
そこの社長さんが「武蔵野市の農家さんでつくられた野菜をお店に出す」ということを積極的にやられているんです。
野菜も僕が仕入れてきたりしているんです。そこで後藤農園さんと知り合ったんです。

面白い話なんですけど、武蔵境の獣医大学の学生さんが都市農業についての卒論を書きたいとのことで
週に2〜3日後藤農園さんに通っているそうなんですね。
で、このプレイベントに参加してくれるそうなんです。そうやって僕らが呼ばなくても自然に人が集まってくれる。

(佐々木)単純に音楽だけをやっているよりも「人とのつながり」という点で広がりがあるんです。

(羅久井)絶対に出合わなかったような人たちと一緒にごはんを食べることができるんですよ。
農家のおかあさんの手作りの料理をみんなで食べるんです。

僕は最近週に1回は顔を出して色々農作業のお手伝いをしてるんです。
農家さんは命をけずって野菜をつくっているんです。それくらいしないと協力はしてもらえない。

(田中)田舎だと普通にあるんですけどね、そういう近所づきあいって。
この前も実家に帰った時に近所の一つのビニールハウスで近所の人たちがみんなで作業をしているんですけど、東京にはそういうのがない。

★「近所づきあい」って都市部だとなかなか難しいですよね

(田中)そこで僕らのイベントを通じて、音楽を通じて、農業を通じて、出会いの幅、おつきあいの幅を広げて欲しいんです。

(羅久井)あと、僕は会社をつくりたいんです。
ひとことでいうと「農家を応援する会社」「ミュージシャンを応援する会社」なんですけど。
この二人(田中さん、佐々木さん)がとても面白くて、二人とも税理士を目指しているんですよ。

(田中)まずフェスを開催して農家さんや飲食店さんに参加してもらう。
さらにその人たちが税金のことで困っていたら相談にのって顧問税理士としてやっていく。
というビジョンも持っています。農家さんのバックアップをしたいんですよね。

★「趣味」とか「社会貢献」だけじゃなくてちゃんとビジネスにしようとしているところがいいですね

(田中)「稼がないと続かない」と思うので。

(羅久井)継続することはとても大切なことだと思っています。
先日の第1回目の収穫体験は平日の朝だったので参加者は3〜4人くらいかなと思っていたんですが
12人も集まってくれて、みんなよろこんでくれたんです。
そしてみんな「また参加したい」と言ってくれたんですよ。
繰り返し参加してもらうことによってより新しい出会いが増えていくと思っています。

★それでは最後にメッセージをお願いします。

(羅久井)イベントを通じて一番伝えたいことは「おいしい」ということなんですけど、
最近は「知ってる」「知らない」っていうのがキーワードかなと思っているんです。

例えば、イベントで収穫した「かぶ」がとてもおいしくて、生でかじれるんです。
お客さんも最初は「かぶを生で食べるのはキツイでしょう」って言うんですけど
食べてみると「甘い!」ってみんな驚くんですね。

「とれたての野菜はおいしい」ということを「知らない」から「知ってる」に変わる。

僕らは「知らない」という人に「教えてあげたい」という気持ちで今後もイベントを続けていきたいと思っています。

★ありがとうございました。

聞き手:丸山瑞枝、吉澤昌志
記事:吉澤昌志
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VEGEON (ベジオン) 〜vegetable and music〜
http://vegeon.jimdo.com/

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ベジオンプレイベント

2013/5/25(土)
武蔵野市/後藤農園
『畑ライブ&畑仕事お手伝い』

●当日運営代表:羅久井俊介

●畑まで徒歩15分(武蔵境駅北口より)
●持ちもの:軍手、汚れてもよい服装(着替え)、マイバック
※参加費500円(定員20名)

13:00 武蔵境駅集合
13:30 畑仕事手伝い開始(資材片付け、苗作り、誘引作業、草むしりなど)
15:30 採れたて野菜のお食事&畑ライブ

出演アーテイスト:AGRI CRAFT、白岩萬里、宇宙クラブ(岩崎、前川)、亜細亜大学生1名予定
17:00 解散

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ベジオン第2回

2013/6/14(金)
吉祥寺 Planet K
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-10 八番館ビルB1
0422-21-7767
前売券2,000円 / 当日券2,500円
※チケット代+1,500円にて飲み放題。
open 18:00 / start 18:30
【イベントタイトル】
AGRI CRAFT × ザ・クレーターpresents
VEGEON (ベジオン)vol.2

【イベント内容】

朝:武蔵野市 後藤農園にて野菜収穫体験(ピーマン、きゅうりなど予定)
10:30 武蔵境駅集合(畑まで徒歩15分)
11:00 野菜収穫開始
13:00 収穫体験終了

※参加費無料

夜:ライブイベントと採れたての野菜を食べる

追記

5/25(土)に行われた「ベジオンプレイベント」ですが
JCN武蔵野三鷹でオンエアされた内容がYOU TUBEにアップされてます。
http://www.youtube.com/watch?v=O4c1dhrETbw&feature=youtu.be
4分程度なんで、ぜひみなさん見てみてください。
よろしくお願いします。

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