理事長所信

公益社団法人立川青年会議所 理事長所信

第52代理事長 中川 夕香

 スローガン最終

■はじめに
 「大好きなまち」で暮らし、働き、誇りに想いながら、皆がまちのことを能動的に考えていくことこそ、真のまちづくりに繋がると考えます。私は自分が住むまちが大好きです。このまちで出逢う人が、私を成長させてくれました。それは私たち青年会議所でも同じことが言えるのではないでしょうか。

 今から 51 年前、日本で 300 番目、東京で 2 番目に設立された立川青年会議所は、創始の想いは少しも色褪せることなく、社会の情勢やその時代に求められていることを的確に捉え、先見の明をもって運動が展開されてきました。しかし今、私たちはこれまでの想いを継承し、地域や子供達の未来を「本気」で考え、運動を行っているでしょうか。確かに、めまぐるしく世の中が変化する中で、会員にとって青年会議所運動の価値観や使命感が変化しているのも事実です。しかし、「明るい豊かな社会の実現」という理念を根底に据え、社会や地域の課題を解決することに積極的に取り組み、青年としての真摯な情熱を集結して邁進せずに、青年会議所運動の意味はありません。

 私は 8 年前に父を亡くしました。下町で育った父は 20 歳で土地勘もないこのまちで起業し、そこで青年会議所と出逢いました。それから 20 年間、「仕事 100%、家庭 100%、JC100%」と駆け抜けました。その後も仕事が大変な時も病気の時も常に人のこと、まちのことを考えている父でした。なぜそこまでの気持ちになれたのか、私は青年会議所に入会してそれがわかりました。ここには素晴らしい仲間がいます。このまちには魅力的な人が溢れています。そんな人々に出逢い、様々な経験をし、その中で病気を患いながらも最期まで想いを貫けた父がいたのだと思います。「地域のことを語る前に、自分の子供に想いは伝えられているか」という話を耳にします。まちづくりについて父と語り合ったことは一度もありませんが、亡き父の背中を見て、大好きなこのまち、そして人の為に自然に行動を起こしている私が、今ここにいます。

 

■Think global , Act local 思考はグローバル、行動はローカル
 2020 年、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、間違いなく東京は経済成長はもとより都市の発展を加速させるでしょう。世界全体の観光客数は 2020 年までに伸び率約 55%と予測されており、訪日外国人旅行者数も増え続けるはずです。2020 年を「世界中の人々に自分の住むまちを知ってもらい、訪れてもらう千載一遇のチャンス」と捉え、青年会議所ならではの視点で、オリンピックそしてその先を見据えて運動を展開していくべきです。

 グローカルという言葉があります。全世界を同時に巻き込んでいく流れである「世界普遍化」(globalization)と、地域の特色や特性を考慮していく流れである「地域限定化」(localization)の 2 つの言葉を組み合わせた混成語です。近年、国が地方創生を成長戦略の目玉として掲げています。都市が発展し、人口も集中する東京は少し違った観点になるかと思いますが、各地域の活性がこれからの日本を支える大きなカギとなるのは間違いないでしょう。今後それぞれの地域が特徴を生かして将来を切り開く時代には、多種多様な価値観が共存し、その地域の文化、思想や精神が反映されるはずです。生み出されてきた地域資源の背景には多くの物語があり、関わった全ての人々の地域愛がそこにはあります。地域資源を再発見し磨き上げることは、各地域の強みを生かした自立的・持続的な成長の力に、更には日本を世界に発信することにも繋がります。「グローバル化」が言われて久しくなります。最も大切にすべきは、境界線を持たず広い視野で物事を捉える思考を持ちながら、地域からその特性を活かしたアクションを起こすことだと思います。自らが主体的に、そして協働を図りながら地域の価値をあげていく力、即ち「地域力」が今こそ必要です。

 本年度、第 45 回東京ブロック大会立川大会が 15 年ぶりに立川で開催されます。日本青年会議所が公益社団法人格を取得し、この大会も数年前から今まで以上に東京都民に私たちの運動を積極的に発信する方向性になりました。「明るい豊かな社会の実現」の理念のもと、地域の皆様とベクトルを合わせ、開催地であるこのまちの「地域力」を東京全域に魅せていきます。

 

■真の国際人とは
 大学時代、私が留学したイギリスで最も感じたのは自分が日本のことも自分が住むまちのこともほとんど知らないということでした。27 歳の時に日本語教師としてオーストラリアに行った時も、むしろ現地のオーストラリア人の生徒のほうが日本の文化やアニメに詳しかったのを覚えています。私にとってこの経験は、国際人として必要なことは何かを考えるきっかけになりました。
日本は、世界から称賛される多くの自然や伝統・文化、そして優れた技術とそれを生みだす人材を有しています。どれだけの日本人がそのことに気が付いているのでしょうか。

 私たちはもっと自分が住む国やまちについて知るべきです。また、同時に世界には様々な異なる文化があり、思想があります。多くの「違い」を知ることで、時には理解し合えない事があるという事も解り合える心を養っていく必要があります。その上で、私たち日本人の考えや想いを世界に発信していくべきです。

 

■地域を担うのは子供達
 幼い頃、両親に連れられて地域のお祭りやサマーキャンプ等のイベントによく参加しました。その時、一生懸命私達の世話をしながら声をかけてくれた大人がいたことを今でも覚えています。何気なく見ていた景色、当たり前の様にしていた経験でも、忘れてしまっているようですが、実は潜在的に心の奥深くに残り、例えその後、他のまちで暮らしていても、どこか景色に懐かしさを感じたり、人との触れ合いに安心感を覚えたり、育ったまちを恋しく思った経験は誰しもあるのではないでしょうか。そのような時に改めて、幼少期に見て触れて感じた経験が、今の自分の価値基準になっているのだと感じます。

 少子化や核家族化、受験戦争、SNS の普及等、様々な社会状況を背景に、子供達は人と深く触れ合う機会が少なくなっている気がします。インターネット社会が加速し、小学生でもボタン 1 つで情報を得られる時代です。こうした環境下でこれからの子供達には、目の前にある情報だけを鵜呑みにせず、考える力、自ら行動していく力が更に必要です。子供達には、まちに埋もれてしまっている魅力を発見したり、人と触れ合ったり、また課題を見出し解決策を考える事にチャレンジして欲しい。経験こそ財産です。今こそ多種多様なことに「見て、触れて、感じて、考えて、行動」してもらいたい。なぜなら、間違いなくこのまちの未来の担い手は子供達だからです。

 

■付加価値をつけた運動発信
 立川 JC には 51 年かけて構築されてきた歴史とブランドがあります。しかしながら、ブランドとはある意味受け手が価値を感じて初めて築かれるものです。まずは地域における青年会議所の社会的認知度を向上させ、存在価値を更に高めていく必要があります。青年会議所はどんな団体なのか、どんな活動をしているのか、地域の人々に支持されてより一層運動が広がります。地域の人々の意識の琴線に触れるコミュニケーション戦略を展開すべく、目的や内容によって、言わばデジタルとアナログを組み合わせて発信していくことが大切だと考えます。瞬時により広く発信すべき情報もあれば、膝詰めで一人ひとりの理解を深めていかなければならい情報もあります。世の中には SNS を始め多くのメディア媒体が溢れています。私たちの運動をその内容、ターゲットに合わせ、各種媒体の特性を考慮し、それを組み合わせて効果的に発信していきたい。更に、活動する一人ひとりのメンバーが、青年会議所運動の本質を理解し、自身が運動を広めていく気概を持ち、「伝える」だけではなく「伝わる」運動発信をしていきます。

 青年会議所が行ってきた活動は今や NPO、NGO、企業が率先してやっていることも多くあります。青年会議所単体に固執することなく、目標達成の為ならよい意味で手段を選ばず主体的仲介者となりながら、政策的連携を深め運動を共に発信していくことも大切です。

 私は国際委員会委員長時代、学生団体と協働し様々な事業を行ってきました。彼らの斬新なアイデア、勢い、そして既成概念に捉われない考え方には、驚かされ助けられたことも多くありました。また、協働することにより彼らからも運動の波紋が広がります。まちのことを考え、何か出来ることはないかと思っている個人あるいは団体と協働することは、私たちの運動をより広く発信するはずです。

 

■JAYCEE の可能性は∞
 私が大切にしたいもの、それは一人ひとりのメンバーです。私たちは変革を迫られる前に変革しなければなりません。いつの時代においても世界を変えてきたのはたった一人の想いと行動からであり、それは歴史が証明しています。この立川青年会議所には約 100 名のメンバーがいます。ビジネスパーソンならではの発想力と行動力を生かし、個々の能力が最大限に発揮され、化学反応を起こせば、この団体が持つ魅力や力は計り知れないものになります。個の力は絶大です。自ら発揮する力もあれば、引き出される力もあります。

 個の力(点)を繋ぎ合わせ線に、そして面に出来るリーダーも生み出していかなければなりません。

 私たちの想いを伝えていくことは、同志を増やすことに繋がります。立川青年会議所は、ここ数年で半数以上のメンバーが入れ替わっています。51 年の伝統を受け継ぎ、地域に必要とされる組織である為に大切なのは何か、それは紛れもなく一人ひとりのメンバーです。

 個々が青年会議所の魅力を肌で感じ、伝えていくことこそ同志を増やしていくことに繋がります。同志が増えれば、地域に対する運動の波紋も大きくなります。メンバーを増やすだけではなく育成プログラムやフォローアップを欠かさず、まずはこの組織がどんな組織なのか、世界や日本全国の青年会議所運動を知り、また各地で開催されるフォーラムや研修に積極的に参加することで、この団体の本質を共有していくべきだと考えます。実践することにより、初めて「自らが地域に運動発信出来る JAYCEE」として自立自走できるメンバーになっていくのだと思います。

 

■最後に
 人間にとって大切なのは「想い」「学び」「行動」だと思います。確かにテクニックや知識だけでも、それなりの見栄えは繕うことは出来ます。しかし、想いが人を動かし、学びが人を成長させ、個の成長が我々のような団体やまちを活性化させるのです。「こういうことを誰かがやってくれたらいいのに」ではなく、常に自分なら何ができるかという意識と何より行動力が大切です。

 時間は誰しも平等です。そして生命は限られています。いかに本気で、泥臭く、青年らしく失敗を恐れず行動するか。本気で自ら行動した人のみ得られるものが必ずあり、後悔のない充実感に満たされると確信しています。今の時代に生きる私たちが責任感と使命感を持ち、メンバーには立川青年会議所に入っていて本当に良かったと思えるような、地域の人には常に期待され、自然に協働し、応援してもらえるような団体でありつづけます。

「想い」をもってアクションを起こそう。
自らが主体的に、そして協働を図りながら地域の価値をあげていくことこそ「地域力」。
私たちがその先頭に立って運動を起こしていこう。
未来を創るのは私達一人ひとりである。