LearningⅠ体験学習《自分のミライが変わる~世界の問題と私たちの問題~》体験レポート

共感リレーション構築委員会 秩父あぐり

2017年5月13日(土)に「LearningⅠ体験学習《自分のミライが変わる~世界の問題と私たちの問題~》」が昭和記念公園の花とみどりの文化センターにて開催され、5人の中学生が参加しました。
 今回の体験学習の目的は「世界と日本の立ち位置や現状を体験して学び、広義での諸問題を知って頂く。積極的にコミュニケーションを取りながら、座学だけでは学べない「気づき」・「感じ」・「考える」ことを楽しみながら行い、地球規模の視点を持って、第3者的な視点で日本を考えてみましょう」というものです。

 私は当日の朝9時に広報の担当としてカメラを持って昭和記念公園の花とみどりの文化センターに集合しました。午前中は「富良野自然塾」午後は「もしも世界が100人の村だったら」の体験です。  センターに集合してからは教室で今日の予定を確認して、昭和記念公園へと向かいました。集合時は生憎の曇り空、時間が経つにつれて雨が降り、雨脚も強くなっていました。しかし、富良野塾自然塾での授業は雨の中でも十分に体験することができました。
 富良野自然塾東京校とは、北海道富良野市において作家の倉本聰氏が塾長を務める「富良野自然塾」のコンセプトをそのまま国営昭和記念公園において実施するもので、他に今治・京都・北九州にて実施されていて、2014年に首都圏で初めて開校しています。富良野自然塾にて研修、訓練を受けたとても明るくて元気良く表情豊かなインストラクターの先生、前杉昌枝さんが案内してくださいました。
 1番目の授業は「緑の教室」です。けやきの木の近くにベンチが並んでおりそこに腰かけてお話しを聞きました。ここでは、酸素と水の大切さ、それを作り出している木の葉っぱ一つ一つのすごさを教えて頂きました。酸素の大切さを実感するために、「鼻と口を覆って息を止め、何秒・何分保てるか」を競いました。私はこのような息苦しさを我慢する体験が怖くて苦手で十数秒ですぐに息を吐いてしまいました。参加の中学生も表情豊かに我慢していましたが、一番長く息を止められたのは先輩であるJCメンバーでした。この体験は大変だったですが、やはり酸素の大切さ、酸素が無くなったら死んでしまうのだというシンプルな事を実感することができました。そして、けやきの木そして森、森が無いと私達は息をして生きていくことができなくなるということを深く胸に刻みました。環境破壊が進み、地球の砂漠化が進めばどうなってしまうのだろうと思いました。
 2番目の授業は「裸足の道」です。タオルで目隠しをして裸足で芝生・砂利・丸太・落ち葉・土などの地面を歩きました。2人一組で手を繋いで案内役と体験役がそれぞれ交代で行いました。私は中学生と体験しました。目隠しをするということは本当に何が始まるのかわからない怖さがあり、手を握ってもらうだけで安心を感じました。しかし歩きはじめると足の裏に当たるものを目でみないで触る感覚だけで判断するのが本当にまた怖く恐る恐る腰がひけているような状態で歩いていました小さい石がたくさんある、これは落ち葉かなと触った感覚と音でわかるのですが、まずはじめの感触にいちいちびっくりして”ひゃあ”とか”わっ”など声を上げてしまいました。おそるおそる歩きすぎて後ろから抜かされていたようでした。ゴールが来た時の安堵感は表現しがたいものでした。体験を通じて思ったのは視覚から得られる情報は本当に多く、頼りにしているのだなと思いましした。そしてその視覚を遮ることで、人間としての視覚以外の感覚である触覚、聴覚、嗅覚などが研ぎ澄まされるのだと思いました。また裸足になって土、地面、草などの生命の息吹を感じながら解放感を味わいながら歩くことの楽しさも感じました。アスファルトにはない水を含んだ土や草の柔らかさは本当に気持ちの良いものでした。中学生もとっても面白そうに楽しそうに体験していました。
 3番目に体験したのは「1mの地球」の授業です。1mの大きさの地球の模型の前で、地球の構造や海のこと、陸地のこと、そして激しいスピードで消滅しつつある熱帯雨林の現状、地球と月、太陽との程よい距離それが奇跡的なバランスであるから、地球が今の環境で存在していることを教えていただきました。その中で印象に残っているのは、この1mの地球においては海の水はビール瓶1本分の660ml、その中で生活に使える水はたったの1滴であるということです。その水を今私達日本人は自由に潤沢に使っていますが、砂漠地帯の人々はほとんどキレイな水もなく使えていません。水を作り出しているのは雨、降った雨を保っておくことができる土と植物、森です。その森林が今、減少しています。地球の危機は今そこにあるのを実感しました。中学生も前杉先生の質問にすぐに答えてくれて嬉しかったです。
 そして4番目最後に体験したのは「46億年・地球の道」の授業です。地球の46億年の歴史を460mの距離に置き換えて教えていいただきました。地球は高温になったり凍結したりを繰り返しながら生物が生まれ、恐竜などに進化、人間になったこと、今私達が恩恵を頂いているエネルギー資源である石炭や石油はかなり前から地球に出来ていたそれを今使わせていただいていること、一つ一つ驚きをもって受け止めました。途中、恐竜の時代には、恐竜の足跡が砂地に作られておりそれを見ながら木の位置で頭や尾の位置を教えて頂き、大きい恐竜を想像しました。大きい命がここにあったのだなと思うとスケールの大きさに心が広がったような気分になりました。そして、人類誕生進化、これは地球規模で考えるとほんの一瞬のことで460mの内のほんの数cm位の出来事ということでした。また世界人口はずっと一定を保っていたのですが、20世紀に入って産業革命がおこり、爆発的に人口が増えました。以前なら直せない病気も医療の発達で直せるように、予防できるようなったこと、便利な機械、発明が増えたこと、人口が増えるにしたがって地球の環境は大きく変わりました。私達人間が地球の環境を変化させてしまったのです。最後に前杉先生のお気に入りの石碑「地球は子孫から借りているもの」(倉本聰さんの言葉)を全員で読みました。未来の人たちから借りている地球、もっと大事にしていかなくてはと思いました。
 富良野自然塾での体験が終わり、センターの戻りラウンジにてみんなで昼食を食べました。中学生のみんなとJCメンバーで和気あいあいと楽しく過ごしました。
午後より教室にて富良野自然塾の振り返りをJCメンバーと中学生と行い、LearningⅠ体験学習の2つ目「世界がもし100人の村だったら」を開始しました。

*「世界がもし100人の村だったら」とは「世界がもし100人の村だったら(If the world were a village of 100 people)は、インターネット上でチェーンメールのように広まって、世界的に流布した世界の人々の相互理解、相互受容を訴えかける「世界村」について示唆を与える文章のことです。2001年前後から世界的に広まりました。日本ではマガジンハウスより発売された同題の本が爆発的に売れて知られる様になりました。」(参照:ウィキペティア)

 今回の体験学習では「言語、宗教、貧富、教育水準、人口などを世界がもし100人の村だったらと仮定して世界の現状を知るワークショップ」を行いました。中学生の皆さんが世界の現状に関心を持ち、世界の中の日本や、日本における外国人との価値観の違いに気づき、外国人とのかかわりを見直すきっかけになることを期待しています。
NPO法人DEAR(開発教育協会)から中村先生にお越しいただき授業を行っていただきました。
 まず世界の現状認識として「地球は有限で増えたりしないのに、世界人口、工業化、公害、食糧生産、資源減少は幾何級数的な勢いで拡大しているため、私たちは破滅に向かって進んでいる。」と中村先生はおっしゃっていました。先の富良野塾で地球は有限を勉強していたせいか、すっと内容が頭に入ってきました。世界の人口は2017年5月11日現在73億9854万4582人で日本の人口は70分の1の1億2686万人です。世界の人口は富良野塾で教わったように産業革命で爆発的に伸び、産業革命前で10億人くらいだったのが現在の73億人、そして2050年には91億人に達すると言われています。日本は人口減少が続いていますが世界は人口が増加し続けている。もっと世界の現状を知らなくてはならないと感じました。

 ワークが始まりました。まず、一人ずつ役割カードが配られました。中村先生からお声をかけられたらそのカードの役割になりきって行動するというものです。同じ挨拶をする人でまず集まりしました。「世界で最も話されている言語は何か?」という問いには英語かなと思いきや1位中国語2位スペイン語、3位でやっと英語、4位がアラビア語でした。中国は人口が多いためですが、スペイン語は植民地であった土地に住む人はそのままスペイン語を話すようになったためです。それもまた知らなかったことでしたのでとてもびっくりしました。そして、世界で話されている言語は6,000語もあり、その中で2,500語が今世紀中に消滅すると言われています。話す人がいなくなるということです。ちなみに、日本でも8の言語(アイヌ語、八重山語、与那国語、国頭語、沖縄語、宮古語、奄美語、八丈語)が消滅の危機にあります。残念なことです。
 それから役割カードに書いている地域に分かれました。人口が多かったところはアジアでした。1位は中国の14億1163万2900人、2位はインドの13億87万9800人、3位はアメリカ3億2447万9800人、4位は意外なところでインドネシア2億5927万1700人、5位はブラジル、6位パキスタン、7位ナイジェリア、8位はバングラディッシュ、9位はロシア、10位がメキシコで1億2701万5700人そして日本が続いていきます。そして唐突に画面に文字が出ました。役割カードに同じ文字と翻訳が載っていた人はその通りに座りましたが、載っていない人は何がなんやら分からずに戸惑っていました。「文字が読めないということの厳しさ」を一瞬で理解した場面でした。それからグループで「もし字が読めなかったら、何が困ると思いますか」の内容で話をしました。「買い物に行っても説明が読めない。役所の手続きがわからない。本や新聞が読めないし、インターネットもできないから情報が得られない。SNSで人とつながることもできないので人間関係がとても小さくまとまってしまう。臆病に暮らしてしまう。」などの意見が出ました。中学生も考えながら「それは困るなあ」と想像力を巡らしているようでした。
 次に、じゃんけんで5つのグループに分かれて20個のせんべい(所得)を世界の現状に照らし合わせて分けるワークを行いました。1番多い地域が15枚を独占し、2番目で3枚、3番目で1枚、4番目で4分の3枚、5番目で4分の1枚を分け合う結果となりました。予想に反して少ない現状に中学生のみんなも不満を持って「多いところがうらやましい。」「分けてもらいたい。」「ひもじい気分になる」と言う言葉を口にしていました。今、世界の所得の7割以上は最富裕層が持つ状況とのことでした。また、中村先生よりグループでの話し合いの課題「なぜ、貧富の差がこんなにあるのか考えて下さい」をもらいました。各々のグループで話し合った結果を主に中学生に発表してもらいました。
 それから「世界がもし100人の村だったら」の文章を読んで印象に残った部分をマークし、その時に感じた気持ちを表現、その理由を書くというワークを行いました。私は「かわいそう」「心配だ」「悲しい」でしたが、他に「複雑だ」と表現している人も多かったです。
 100人の村の文章はとてもわかりやすくシンプルに世界の現状を表しています。多種多様な民族がいてそれぞれ違う言語を話し文化や宗教を持ち、外見も異なること、栄養不足の人、安全な水が飲めない人、お金がない人、空爆や襲撃や地雷による殺戮や武装集団のレイプや拉致におびえている人は100人中20人、いやがらせや逮捕や拷問や死を恐れずに信仰や信条、良心に従ってなにかをし、ものが言えない人は100人中48人、文字が読めない人は100人中に14人もいるとのことです。テレビの向こうで起きていることもじっくり文字をみんなで読んで考えることでより実感をもつことができたと思いました。
 最後に100人村のワークの感想をグループで話あい、模造紙にポストイットに書いて貼り、さらにSDGs(持続可能な開発目標)をそれに照らし合わせてみて、最後にまとまったことを発表してもらいました。教育がしっかりしていないと国が発展しない、多様性を認め不平等を無くすには話合いをしていくこと地球環境の現状は危険性が目に見えてわからないので実感がない、でも無駄をなくしていかないと森林や資源は減少してさらに困ったことになるなどたくさんの意見が出ました。中村先生は持続可能な開発のための2030アジェンダでは改革(リフォーム:制度などの一部を変え改めること)ではなく、変革(トランスフォーメーション:変えて新しいものにすること、変わって新しいものになること)だとおっしゃっていました。SDGsを達成するにはこれまでとは違う新しいやり方が必要であるということです。今日の世界は「貧困、不平等、機会・富・権力の不均衡、ジェンダーの不平等、失業、自然災害、紛争、暴力的過激主義、天然資源の減少、砂漠化、かんばつ、気候変動」であり、これを目指すべき世界「人権の尊重、多様性の尊重、平等、ジェンダー平等、暴力からの解放、社会的障害、経済的障害の排除、公正、寛容、包摂性、持続可能、人間らしさ、生物多様性、強靭さ、調和、民主主義、働きがい、環境保護、貧困・飢餓撲滅」へと変革する。その時に大切なことは、「現在の経済・社会・政治的構造やしくみ、枠組み、ライフスタイル全てを疑ってみる、見直すこと」と中村先生はおっしゃっていました。そこで今回の授業は終了しました。朝会った時の表情と、全ての授業が終わった後のみんなの表情は全然違っていて生き生きとしているように見えました。一緒に授業を受けた私自身も変わったのかなと思います。

体験学習で学んだ多くのことは、決して1日で全てを把握・消化できるものではありません。しかし、体を使って感じたこと、想像力を巡らして考えたことは参加した中学生の心に多く残ったのではないかなと思います。例えば、息をするためには木、森が必要なこと、裸足で歩いて大地を感じたこと、地球の歴史を歩いてみたこと、地球の環境は激変していること、これ以上の環境破壊は食い止めないといけないこと、世界にはたくさんの人がいて、話す言葉は国の数より多いこと、世界には貧しくて字も読めない人もいること、世界の所得は塞富裕層に集中していること、自由に発言ができない国があること…。その学びを心に、また参加できなかった中学生の皆さんもぜひこのレポートを読んで興味を持ったら、次回のLearningⅡ体験学習にぜひ参加していただきたいなと思います。次回は7月29日(土)、内容は2030年までに私たちは、『どんな社会(世界)で暮らしたいか』自分の将来や街の将来について専門家の助言を受けながらチームで理想の街とは?を考え課題を抽出していきます。皆様のご応募心よりお待ちしております!