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立川青年会議所について

2000年代 運動指針

社団法人立川青年会議所では創立40周年を機に、2003年に「2000年代運動指針」を策定しました。


プロローグ

日本における青年会議所運動は半世紀の歴史を刻み、社会の劇的な変化に晒されながら今日では社会情勢と同じく混沌とした状況に陥っているといわざるを得ません。右肩上がりの経済成長と人口増加が当たり前であった時代にはある種の物質的、精神的なゆとりの中にアクティブなJCの活動の大半が存在をしていたことでしょう。しかしながら、混沌とした社会情勢の中、成長から安定を目指すのが限界の経済事情や、少子高齢社会到来に伴う明らかな人口減少=経済規模を維持していくことが今後困難だと予想される今日、アクティブなJCの活動の大半を支えてきたゆとりが喪失しつつあります。”JCなどやっている場合ではない”そんな声が聞こえてきます。地方分権が進む中、本来であればJCの理念を具現化できる時代が到来しつつあるにもかかわらず、今まさに私たち自身の組織の在り様、立川JCのレーゾンデートル(存在意義)を問われているのです。

JCは青年経済人が集い、明るい豊かな社会の形成に向けて日々活動をしている団体…簡単に言えばそういえるでしょうが、“青年経済人”とは,“明るい豊かな社会の形成”とは一体何なのでしょうか?日本JCでは2000年代運動指針において、目指すべき社会を創造性豊かな、いきいきとした活力ある社会と位置づけていますが、JCの理念に賛同し、活動エリアに在住または在勤している20縲鰀38歳までの市民であれば、原則として誰でも入会できるのが立川JCのシステムです。では、単にその条件を満たせばJayceeと呼べるのでしょうか?本来であればJCの理念に賛同した後にJCで求められている研修プログラムにおいて自己啓発に努め、JCの理念の具現化の為に求められている資質向上を果たして、初めて青年経済人と、Jayceeと言えるのではないでしょうか。私たちは理念の具現化に向けた資質向上にもっと積極的かつ恒常的に取り組み、地域社会に変革を起せる人間力を高めていかなければなりません。Jayceeとしての驕りなき自信と強い気概を創りだすことにより、己の立脚点を導き出し、目標を見出せる体勢を整えなくてはならないのです。

立川JCとして40年という歴史を刻もうとしている今日、今後いかに組織をそして運動を進化させていくのか、それとも社会情勢に順応しながら停滞を続けるのか、その端境期を迎え、立川JCのメンバー一人一人が誇りあるJayceeとして、強い使命感のもと、常に運動に対する強い気概を持ち、運動の持続性を明確にすべく、ここに2000年代運動指針を策定するものとします。


1 JC運動の機軸人間力開発-LDの立川の伝統を…更なる進化へ-

立川JCは2004年に40周年を迎えようとしていますが、過去を振り返ると長年、指導力開発(Leadership Development )において顕著な運動展開を図ってきました。まさに”LDの立川として…”。では現在はどうでしょうか…。個々のメンバーにおいては自発的に研修セミナーに参加したり、ライセンス等を取得していますが、組織として、そして地域として欲する人材育成は恒常的に行われているのでしょうか? 残念ながら、色々な場面で青年会議所メンバーとしての基本的な知識が欠如していたり、何故?と感じさせられることが日常的に多々見受けられます。同時に組織中枢を担うべく人材がなかなか育成できていない現実も否めません。これにより偏った一部のメンバーだけが常に組織を運営していかなければならない状況が生じ、それに対する負担感ばかりが顕在化する悪循環に陥りつつある現実をいかに打破するかが当面の命題ともいえます。

日本JCでは2000年代運動指針において、人間力開発の重要性を高らかに謳っていますが、まさにこれまでのJC内における個々の資質向上を目指したトレーニングばかりだけではなく、地域に変革をもたらすことのできる人材の育成といった、オブジェクト志向の人材育成プログラムに進化しつつあります。

立川JCにおいても、Jayceeとしての基礎トレーニングについて標準化を行い、必ず入会したメンバーがその基礎トレーニングを積み重ねることにより、メンバーとしてのある一定レベルまでの知識・技能を身につけることから始めなければなりません。そして更に地域に求められている社会貢献ができる人材育成を図ることを組織内にシステムとして構築することにより、対外的にも、また組織運営についても中枢を担うことのできる人材を多数養成していくこととなるのではないでしょうか。偏った一部のメンバーだけが常に組織を運営していかなければならない状況を打破し、負担感をやり甲斐に変えていく為にも、LDの立川を更なる進化に繋げていきましょう。

  1. アカデミープログラムの策定・実施
  2. 地域における人間力開発プログラムの策定・実施
  3. プログラムの継続的な実施の為のインストラクター養成

2 立川JCのレーゾンデートルの確立-我々は何をめざすのか…-

[1]経済(産業・経済)ビジョン

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私達のJC運動の基盤には、安定した経済活動にあるといえます。同時に地域においても活力ある企業が地域経済を支えていき、コア世代である私達にはその活力を地域に発信することが求められています。 私達はまず自らがビジネスの先端をいく青年経済人として、自己啓発に努めると同時に、様々な角度からの情報収集に努めなければなりません。また青年経済人の団体として、時流のビジネストレンドをしっかり掌握しつつ、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)育成に向け、社会貢献を主眼においたビジネスモデルを地域に広く発信することが今求められています。これは単なる収益最優先の資源消費型社会システムから循環型社会システムへと地域レベルから変革をしていく、そして立川JCのメンバー一人一人がそのシステム構築に向けた魁となることが求められているということです。その為には社会起業家になりうるだけの能力開発を恒常的に行い、様々な知識・技法を習得しなければなりません。そしてその成果としてそれぞれの企業に戻り、何らかの実績を残すことができれば、魅力あるJC、魅力あるJayceeの第一歩は創り出されるのではないでしょうか。Jayceeが地域の活力ある経済をリードしていく存在になることができれば、その光り輝く個の重なり合いが地域に大きな光を放つこととなり、自ずとその光に市民に注視をし、そして同じ志の青年は結集していくことでしょう。 ① 地域特性を活かしたトレンドとなるビジネス

  1. 地域特性を活かしたトレンドとなるビジネスの調査・研究
  2. 社会起業家育成プログラムの確立・実施
  3. 循環型社会構築に向けた地域システムの創造

[2]地域(文化・まちづくり)ビジョン

“個と公の調和”と”活力と知力”が日本JCの掲げる2000年代運動指針のベースであり、地域においても地方主権を目指した中で地域の自立に向けた様々な動きが台頭しつつあります。地域の自立とは、権限・財源の移譲といった行政権限・責任だけではなく、地域住民が自らの意思と行動によって地域をよりよいものにしていこうという自発的な意志から、全ては始まるといえます。そしてJCがそのムーブメントの魁となることにより、地域における”個と公の協和”の突破口は切り開かれるのではないでしょうか。例えば行政がゴミを拾えば、それは行政コストとなりますが、市民が拾えば美化運動となります。それぞれができる範囲から地域の自立に向けた様々な行動に向けたベクトルの確立、そして啓発に向けて我々はもっとコミットメントをしていかなければなりません。同時に近年、まちの宝物探し、まちを愛する心を育む運動 と言った地域アイデンティティーの創出に向けた運動に取り組んできました。まちの伝統ともいうべき個性と、新たに創り出す個性のそれぞれの素晴らしさを顕在化させながら、個性を通じてまちに愛着を持ち、まち(=公)の為に自発的な行動を起せる市民の輪を広げていくことが重要だと考えます。そして市民主導の地域形成に向けた市民活動支援や市民との連携を具体的な活動を通じて継続することにより、更なるシナジー(相乗効果)をも創出できるものと考えます。

また、まちづくりの根幹を成す地域行政のあり方にも積極的に関わっていかなければなりません。 基礎自治体の実態を十分に調査・研究し、このまちのあるべき将来像について議論をし、JCとして、そのまちが目指すべき将来像について政策綱領(立川JC版マニフェスト)としてまとめ、その具現化を運動の基軸とすることにより、地域の真の自立に向けた第一歩が踏み出せるのではないでしょうか。

  1. 立川JC版マニフェストの策定
  2. JCの特性を活かした市民ネットワークの構築
  3. まちへの愛着と自立を目指した地域アイデンティティーの確立

[3]教育(青少年健全育成)ビジョン

立川JCは長年、様々な青少年健全育成事業や近年においては教育プログラム・ビジョンの策定等も行ってきましたが、その間に子どもたちの置かれている環境も大きく変化をしてきました。公立学校の週5日制に代表されるゆとり教育の実施やテレビ・ゲームを始めとする様々なメディアから大量かつ教育上好ましくないものも含まれる情報を得て、感性自体が徐々に変わりつつある様に思えます。その一端として、凶悪化する青少年犯罪や不登校、引きこもりなど、年を追うたびに悪化の一途を辿っています。この様な事態に私達は何ができるのでしょうか?

まずは、私達自身が教育の基本原則や実態について、もっと把握をしなければなりません。日本JCでは教育基本法改正に向けた様々な運動を展開していますが、LOMとしても現行の教育基本法の在り方について考察をし、改正の是非についてもっと議論を進めていかなければならないのでしょう。そして同時に各市との教育関係者との意見交換会を恒常的に行い、地域の現状について実態把握に努めなければなりません。

文部科学省は、子どもの非行や問題行動を防ぐため、地域や家庭の教育力を高めようと「子どもの居場所づくり新プラン」(仮称)を2004年度から実施する方針を固めました。まさに国家とし、 地域と家庭と学校が一体となって子どもたちを育んでいく,という社会環境の整備を開始するのです。立川JCも近年、パートナーシップ社会の構築、地域の先生作りという面から教育に関する事業を展開してきました。地域における教育の実情、子どもたちの実情を理解し、学校・家庭・地域が一体となり、子どもたちを育み、彼ら一人一人が社会に必要とされている人間であるという意識(モチベーション)、そしてJCの理念ともいうべき、社会貢献に対する子どもたちの意欲を高めていく運動をJCメンバーの多様性と親世代としての臨場感を活かしながら進めていくべきだと考えます。

  1. 社会貢献プログラムの策定
  2. 地域教育ファシリテーターの育成
  3. 地域教育ネットワークの創設・運営(仮称:学び舎ネット)

[4]国際(国際交流)ビジョン

立川JCにおける国際交流は近年、姉妹JCである大韓民国温陽JCとの交流が主流でありました。しかしながら国際青年会議所の一員でもある私達は今後更に進むであろうグローバル化・ボーダレス化のトレンドの中で、どの様な国際交流を進めていくべきなのでしょうか。国際交流を円滑に進めるためには、交流の意義、目的ついて明確にすることも重要ですが、交流事業のベースは継続的に互いの理解度を高めていくことから始まります。例えば、温陽JCとの関係においても先方の情報量が少ない為に、交流の経験の希薄なメンバーには、とても近しい関係には感じられないのが現実ではないでしょうか。私達自身が最も近しい国である大韓民国について青年経済人として関心を持ち、文化やビジネスについてもっと吸収すること、文化交流、経営ミッション等の事業を準備段階も含めて複数年で計画し、その間に交流の経験を多くのメンバーに持ってもらうことにより、国際交流の意義が顕在化できると考えます。

また現在の少子化の傾向は、近い将来、間違いなく若年労働人口の不足をきたします。そしてその結果、外国人労働者にその不足を依存せざるを得ない時期がやがて来ることが予想されます。グローバル化・ボーダレス化が叫ばれ、様々な文化に接することが可能となった今日、更にそういった社会の変化に適応する上でも、様々な文化=多文化が混在しうる地域、その中でJCとして積極的に多文化共生に取り組む必要があるのではないでしょうか。まずはお互いの文化の知識をもち、そして交流する場作りから行い、お互いの文化を認め合い、その文化の彩りが地域の大きな魅力とすべく、多文化共生の芽を育んでいきましょう。

  1. 国際交流に必要な知識の恒常的な習得
  2. (複数年計画による)温陽JCとの文化交流・経営ミッション
  3. 地域における多文化共生事業の推進

エピローグ

無知の知という言葉があります。かの有名な哲学者ソクラテスにかかわる言葉です。ソクラテスが40才弱の時に彼の友達の一人がアポロンの神殿に行って「ソクラテスより賢い男がいるか」と伺いをたてたところ、これに対して巫女が、「ソクラテスより偉い男は誰もいない」という神託を伝えました。ソクラテスは、神託の意味は一体何だろうか?と有名な政治家、軍人、詩人などを訪ね彼らと問答をしました。実際に自分より賢い人を発見して、事実をもって神託を反駁しようとしました。ところが、これらの人びとは、自分では智恵があると思っていながら、もっとも大切なことについて何も知らないということを暴露しました。すなわち、彼らは自分に属するもの(財産、名誉等)は知っていたのですが、最も大切なこと、すなわち『自分の魂の善さ』については何も知らないということがわかりました。彼らは、それを知らないにもかかわらず、自分では知っているつもりになっていました。それなのにソクラテス自身は、「自分がそのもっとも大切なことを知らない」ということを知っている。(無知の知)という点で、彼らよりもソクラテスの方がより賢いという神託は正しかった、というソクラテスの神託事件の話です。

これと同じことが私たちJCメンバーにも言えるのではないでしょうか。JCという組織に入り、バッチをし、人前で話し、理事にでもなれば、およそ知恵も知識もあり、目的は達成したような気持ちにはなっているメンバーはいないでしょうか。私達はまだまだ未成熟な人間の集まりなのです。だからこそ、JCで様々な機会を得て、貪欲に学ぶ姿勢を忘れてはならないのです。義務感を覚えて事業を計画したり、役職や地位に必要以上の偉さを感じる様では決してJayceeとして満足しうる資質が備わっているとは言えません。JCの理念は、目的は、具現化する為の方法は…皆の気持ちがひとつになり、様々な考えがJCの持つ多様性の中から生まれだした時、初めてこの組織の真の力が発揮されます。運動指針はそのレールでしかありません。走り出すにはメンバー一人一人の志こそが今必要なのです。その志が未来の光を導き出し、光に向かい志を同じくして走り始めた時に、立川JCは更なる進化に突き進むのです。

混沌という未知の可能性を切り拓き、真に豊かな社会の形成をめざして…