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2009年度 理事長所信

社団法人立川青年会議所
2010 年度理事長 金子 幹広


激しく反応し、行動しよう
-リアルな「運動法人」として-


■40 年前の「未来」、40 年後の「未来」

1970 年。大阪・千里丘陵の地で日本万国博覧会が開かれました。「人類の進歩と調和」をテー マに、世界77 の国が参加し、半年間の開催に6400 万人が来場した「史上最大」と呼ばれた一 大イベント。それは東京五輪とともに物、人、絆、あらゆるものを失った終戦の荒廃からの一連 の復興過程の確認であり、同時に当時の諸問題を解決し、来るべき豊かな社会に向けた一つの未 来像の提示でした。

この年の末に生まれた私には、当時の高揚感をリアルに知ることはできません。しかし、ユニー クな形状のパビリオン、科学、技術、伝統と芸術が織りなす展示、そして強烈な意匠の太陽の塔—— 子どもの頃に見た写真や映像などを通して、やがて来る豊かな未来=「21 世紀」に胸を膨らませ、 そこに暮らしている自分をイメージしたことは強く記憶に残っています。

2010 年。冷戦の集結とそれに続いた民族間の紛争、テロの脅威と資源の争奪、ウィルスに地 球環境問題…この40 年間、世界は数々の事象と直面しました。特に21 世紀最初の10 年間は世 界にも日本にも、これから来る価値の転換、新たな創造に向けた模索の期間であったように思い ます。そのような中で青年がなすべきことは、未来に対して評論家然と悲観や諦念を列挙するこ とではありません。私達自身が夢と希望に向かって働きかけ続けることです。先人達の背中に見 た志を、今私達が受け継ぎ「進歩と調和」に向けた新たなビジョンを示し、行動を起こすときです。  万博の実現は一人の青年官僚の着想から出発しました。そして今日の繁栄が、廃墟の中の青年 達の気概と行動がもたらしたことは言うまでもありません。  今世紀が折り返しを迎える2050 年、40 年後の青年達が過ごす「豊かな未来の姿」をイメージし、 私達には具体的な行動を通して地域からの一歩を記す責任があります。


■「祭り」のあと、「絆」の使命

一昨年夏、数年来の誘致活動の結実として、私達は「絆–KIZUNA–」をテーマに「第21 回 JCI 国際アカデミーin 立川」を主管しました。世界80 の国々と国内各地から訪れたデリゲイツ、 地域から集まったボランティアスタッフ、そしてLOM メンバーがともに汗した一週間。

振り返れば一瞬の出来事であったにせよ、あの時、あの場所で私達立川JC のメンバーは何を 得たのでしょうか。そしてこれから、世界を見据え、地域に向けて何を問い、動いていくべきで しょうか。

車上の仲間に手を振って見送ったあの日から1 年余り。「祭り」の過ぎ去った今、私達はひと たび口にした「絆」という言葉の重みを、あらためて考え、地域に、世界に対し、具体的なかた ちとして提示していく使命があります。


■ JC の公益性と独自性

一昨年末に公益法人改革関連3 法が施行されました。立川JC は法人組織のあり方や運動指針 の見直しなど、その将来を見据えた新たなかたちを考え、提示する時期に来ています。しかし、 そこで真に問われるべきは「公益」か「一般」か、などといった些末な手続き論などではなく、 立川JC の、青年会議所そのものの「存在意義」です。

数多あるまちづくり、ひとづくり活動と比べたJC の独自性とは何でしょう。人に聞いた数だけ、 その思いや答えは様々とは思いますが、私は「変化を求め、動き、創る」にあると考えます。そ れこそ、果ては世界から隣近所まで、“Be Better.” へ向けた未知の可能性を発見し、失敗をお それず積極的に行動する—我々青年世代に与えられた使命や権利をいかんなく発揮できる場所。 それがJC であり、求められる姿ではないでしょうか。


■激しい反応が生み出す可能性の追求

変化を生み出す過程、外部との理解や合意形成においては、多かれ少なかれ必ずそこに摩擦が 生じるものです。特に、既存の枠組みにとらわれない、斬新な発想を形にするプロセスにおいて は、双方が激しく反応し、新たな姿を生むためにも相当量のエネルギーを必要とします。

そのような高い壁を前にしたとき、私達はつい「単年度制なもので…」「時代が…」「仕事が」 といったことに理由を求め、広げたはずの風呂敷を自らの手ですぼめてしまいがちではないで しょうか? JC という器だからこそ、「ここまでやる」ではなく「どこまでやる!?」という、そ れこそ未踏の地、道なき道を探るとの決意に立った、可能性のあくなき追求が必要です。

そして運動を外部に発信する上で、困難を乗り越えるための支えや推進力のよりどころとなる ものは何か…? これこそJC という組織が持ち得る、互いに仲間を信じ合うメンバー同士の「絆」 にあると考えます。それは他所では経験することのできない、出自や職業、立場、考え方の異なっ た多様性同士のぶつかりあいの中から培われるものであり、今このLOM に最も必要とされるも のではないでしょうか。

入会以来7 年弱、これまでの活動を振り返ると、JC という器における真の理解や友情は、結 局のところは損得勘定抜きの仲間だからこそできる「戦い」の中からしか生まれないのだと、強 く感じます。一時的な衝突を恐れるあまり、その先にある本質を見逃してはいけません。意見の 対立、摩擦ひとつない集いなど、単なる馴れ合い、出来損ないのサロンに過ぎません。摩擦を恐 れず、掛け値なしの本気の議論、ぶつかりあいを通し、メンバー同士の混沌から生み出す真の絆 で、他者を、社会を揺り動かしていきましょう。


■リアルな「運動法人」として

私達メンバーには、それぞれ生活の実体としての職場や家庭の営みがあります。立川JC は「社 団法人」という大きな看板こそありますが、ひとつ見方を変えれば、メンバーの誰一人として給 料をもらって働いているわけでもない、ある意味「仮想」な組織といえるかもしれません。だか らこそ、地域を、そして国や世界をも動かす 、「実体」以上にリアルな運動体でありたい—そう、 立川JC は「運動法人」として、反応し、そして行動します。

私自身、先頭に立って戦います。 1 年間どうぞよろしくお願いいたします。